急性毒性
経口
【分類根拠】
(1)~(4)より區(qū)分4とした。
【根拠データ】
(1)ラットのLD50:450~700 mg/kg(厚労省 リスク評価書 (2015)、AICIS IMAP (2013) 、NITE 初期リスク評価書 (2008)、SIAR (1996))
(2)ラットのLD50:450 mg/kg(MOE 初期評価 (2013))
(3)ラットのLD50:460 mg/kg(MOE 初期評価 (2013))
(4)ラットのLD50:700 mg/kg(ACGIH (2011))
経皮
【分類根拠】
(1)~(5)より區(qū)分に該當しない。
【根拠データ】
(1)ラットのLD50:2,200 mg/kg(厚労省 リスク評価書 (2015)、NITE 初期リスク評価書 (2008))
(2)ウサギのLD50:2,066 mg/kg(MOE 初期評価 (2013)、ACGIH (2011))
(3)ウサギのLD50:2,026 mg/kg(AICIS IMAP (2013)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、SIAR (1996))
(4)ラットとウサギのLD50:約2,000 mg/kg(DFG MAK (2002))
(5)ウサギのLD50:1,100~2,200 mg/kg(厚労省 リスク評価書 (2015))
吸入: ガス
【分類根拠】
GHSの定義における液體であり、區(qū)分に該當しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】
(1)~(8)より、有害性の高い區(qū)分を採用し、區(qū)分3とした。なお、ばく露濃度は飽和蒸気圧濃度の90%(437,118 ppm)より低いため、蒸気と判斷し、ppmVを単位とする基準値より判斷した。
【根拠データ】
(1)ラットのLC50(4時間):1,120~2,624 ppm(區(qū)分3~區(qū)分4相當)(厚労省 リスク評価書 (2015))
(2)ラットのLC50(4時間):1,100~2,600 ppm(區(qū)分3~區(qū)分4相當)(NITE 初期リスク評価書 (2008))
(3)ラット(雄)のLC50(2時間):3,500 ppm(4時間換算値:2,475 ppm(7.75 mg/L)、區(qū)分3相當)(厚労省 リスク評価書 (2015)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、US AEGL (2008))
(4)ラット(雌)のLC50(2時間):3,800 ppm(4時間換算値:2,687 ppm (8.41 mg/L)、區(qū)分4相當)(厚労省 リスク評価書 (2015)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、US AEGL (2008))
(5)ラットのLC50(2時間):11,000 mg/m3(4時間換算値:7.8 mg/L(2,473 ppm)、區(qū)分3相當)(MOE 初期評価 (2013)、ACGIH (2011))
(6)ラットのLC50(4時間):2,000 ppm(區(qū)分3相當)(ACGIH (2011))
(7)ラットのLC50(4時間):3.506 mg/L(1,100 ppm、區(qū)分3相當)(DFG MAK (2002))
(8)ラットのLC50(4時間):8.2 mg/L(2,600 ppm、區(qū)分4相當)(DFG MAK (2002))
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】
(1)、(2)より、區(qū)分2とした。
【根拠データ】
(1)本物質液體の皮膚への接觸で、皮膚に発赤がみられ、灼熱感、痛みを生じ、接觸數時間後に強い骨痛を惹き起こす(厚労省 リスク評価書 (2015)、NITE 初期リスク評価 (2008))。
(2)皮膚接觸が長引くと紅斑と浮腫を生じるおそれがある。極めて少量の本物質液體にばく露を受けた後にも皮膚接觸部位付近に深い疼痛(骨痛型)を生じる可能性がある(SIAR (1996)、ACGIH (2011))。
【參考データ等】
(3)マウスの尾に本物質原液を3~5時間浸漬した結果、限局性の皮膚の損傷 (発赤、腫脹、一部の例に皮膚の壊死) がみられた(厚労省 リスク評価書 (2015)、NITE 初期リスク評価書 (2008))。
(4)ウサギを用いた皮膚刺激性試験(原液、0.1 mL)では、軽微な刺激性がみられたとの報告がある(SIAR (1996)、AICIS IMAP (2013))。
(5)EUではSkin Irrit. 2に分類されている(CLP分類結果 (Accessed Jan. 2022))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】
(1)、(2)より、區(qū)分1とした。
【根拠データ】
(1)本物質の眼への接觸は疼痛と角膜障害を伴う重度の眼刺激を生じ、時には持続的な視覚障害を生じるおそれがある。本物質の蒸気も眼を刺激するが、影響は遅れて発現する可能性がある(ACGIH (2011))。
(2)眼への直接的な接觸により、角膜の損傷と眼の奧の痛みが生じた(DFG MAK (2002))。
【參考データ等】
(3)48~96 ppm(150~300 mg/m3)ののばく露でヒトの眼に刺激性があり、高濃度では眼の痛み、羞明を生じる(厚労省 リスク評価書 (2015)、NITE初期リスク評価書 (2008)、DFG MAK (2002))。
(4)ラットに200 ppm (640 mg/m3)を6時間ばく露した試験で、6/10匹に眼瞼の閉鎖、結膜の充血がみられた(厚労省 リスク評価書 (2015)、NITE初期リスク評価書 (2008))。
(5)EUではEye Irrit. 2に分類されている(CLP分類結果 (Accessed Jan. 2022))。
呼吸器感作性
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】
(1)より、區(qū)分に該當しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。
【根拠データ】
(1)マウス(n=5/群)を用いた局所リンパ節(jié)試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指數(SI値)は0.78(25%)、0.75(50%)、1.97(100%)であったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Jan. 2022))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】
(1)~(3)より、in vitro試験では陽性知見、in vivo試験では陰性知見が得られているが、in vivo試験の妥當性に疑義が有り、データ不足で分類できないとした。
【參考データ等】
(1)In vivoでは、ラットを用いた優(yōu)性致死試験(5日間吸入ばく露(7時間/日)、1及び25 ppm)、ラットの骨髄細胞を用いた染色體異常試験(単回吸入ばく露(7時間)、1及び25 ppm)、ラットの骨髄細胞を用いた小核試験(単回吸入ばく露(7時間)、1及び25 ppm)及びマウスの骨髄細胞を用いた小核試験(単回経口投與、400 mg/kg単一用量)で、結果はいずれも陰性であった(IARC 125 (2020)、ACGIH (2011)、SIAR (1996))。
(2)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験で陽性(一部陰性)、哺乳類培養(yǎng)細胞(CHL又はラット肝細胞)を用いた染色體異常試験で陽性又は陰性の結果が得られている(IARC 125 (2020)、安衛(wèi)法変異原性試験 (Accessed November 2021)、MOE 初期評価 (2013))。
(3)(1)のin vivo試験結果からは変異原性の兆候は示されなかったが、被験物質が標的細胞に到達したという証拠がなく、用量が低く(もっと高用量で試験すべき)、現行のガイドラインの基準を満たさないと指摘されている(AICIS IMAP (2013)、DFG MAK (2002))。
(4)EUではMuta. 2に分類されている(CLP分類結果 (Accessed November 2021))。
発がん性
【分類根拠】
(1)より厚生労働省がん原性指針に指定されていること、(2)で動物実験において発がん性の証拠があることから區(qū)分1Bとした。なお、新たな情報源に基づき分類結果を変更した。
【根拠データ】
(1)本物質は労働安全衛(wèi)生法第28條第3項の規(guī)定に基づき、厚生労働大臣が定める化學物質による労働者の健康障害を防止するための改正指針の対象物質である(平成24年10月10日付け健康障害を防止するための指針公示第23號)。
(2)ラット及びマウスを用いた104週間吸入ばく露(6時間/日、5日/週)による発がん性試験(ラット:雌雄:25~100 ppm、マウス:雌雄:50~200 ppm)において、ラットの試験では雄で膀胱の移行上皮がんの有意な増加傾向及び発生頻度の有意な増加が認められた。また、雄では甲狀腺腫瘍(ろ胞上皮腺腫、ろ胞上皮の腺腫又は腺がん(組合せ)、C細胞がん)の発生率、肺腫瘍(細気管支-肺胞腺腫、細気管支-肺胞の腺腫又はがん(組合せ))の発生率、さらに腹膜中皮腫、皮膚の角化棘細胞腫及び乳腺の線維腺腫の発生率に有意な正の傾向がみられた。一方、雌ラットには腫瘍発生率の有意な増加は認められなかった。マウスの試験では、雌雄ともにハーダー腺の腺腫と肺の細気管支-肺胞腺腫の発生率に有意な正の傾向及び有意な発生率の増加が認められた(厚労省委託がん原性試験結果(2003))。
【參考データ等】
(3)ラット及びマウスを用いた78週間強制経口投與(5日/週)による発がん性試験(ラット:雄/雌:0、57/55、77/73 mg/kg/day、マウス:雄/雌:0、172/129、199/258 mg/kg/day)において、ラットの試験は早期死亡例が多発し、本物質の発がん性評価には不十分な試験と結論された。マウスの試験では雌で前胃腫瘍の発生率の増加(統(tǒng)計的に有意差なし)がみられた。雄は本物質の発がん性評価には不十分とされた(IARC 125 (2020)、厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2013))。
(4)國內外の評価機関による既存分類結果として、IARCではグループ3に(IARC 125 (2020))に、EPAでC(Possible Human Carcinogens)に(IRIS (1990))、ACGIHでA3に(ACGIH (2011))、EUでCarc. 2に (CLP分類結果 (Accessed Nov. 2021))、DFGでCategory 3に(List of MAK and BAT values (2020))、それぞれ分類されている。
(5)IRISのカテゴリーC評価の根拠は、(2)の強制経口投與による発がん性試験でみられた雌マウスの前胃の腫瘍と様々な遺伝毒性試験における陽性結果が根幹であり、加えて本物質がアルキル化剤で、ヒト発がん性のおそれがある化學物質と構造的な関連性があるとの當時の1990年當時の見解による(IRIS (1990))。ACGIHのA3評価の根拠は、本物質が78週間強制経口投與後に前胃に腫瘍性病変に基づきマウスで発がん性を有することが示唆され、かつマウスで皮膚腫瘍のイニシエーターとして作用する知見に基づく(ACGIH (2011))。なお、EUのCarc 2の分類根拠は不明であった。
生殖毒性
【分類根拠】
(1)~(3)より、発生影響を示唆する報告もあるが軽微なものであり、根拠として不十分と考えられた。また、繁殖能への影響に関する情報がない。以上から、データ不足のため分類できないとした。なお、新たな情報源を利用し分類結果を見直した。
【根拠データ】
(1)雌ラットを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠6~15日)において、母動物毒性(體重増加抑制、肝臓及び腎臓重量増加)がみられる高用量(300 ppm)で、胎児に軽微な発生影響(胸骨、脊椎體の化骨遅延)がみられたとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2013)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (2011)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2003))。
(2)雌ウサギを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠6~18日)において、母動物毒性(體重増加抑制、肝臓重量増加)がみられる高用量(300 ppm)で、吸収胚數の増加したが、自然発生率の範囲內にあり、奇形や変異の発生率増加もなかったとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2013)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (2011)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2003))。
(3)雌マウスを用いた強制経口投與による発生毒性試験(妊娠7~14日)において、500 mg/kg/dayの用量で母動物の75%が癥狀(軟便、切迫呼吸、無気力、衰弱等)を呈した後死亡した。生存した母動物7例について、2/7例に胎児の吸収、出産率の低下(71.4%:対照群94.7%)及び死産児數の増加、出生児には生後3日までの死亡の増加がみられた。當該影響について、NITE 初期リスク評価書 (2008)では、いずれも高用量投與による母動物毒性に起因する影響と考えられたとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2015)、MOE 初期評価 (2013)、NITE 初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2003))。